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理研【プレスリリース】ASD「局所的な情報処理特性」発表内容

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ASD プレスリリース

 

 

 

理化学研究所のプレスリリースによると、自閉症(ASD:コミュニケーション困難・こだわり有)の症状と脳機能との関連について発見があったようです。

 

《理化学研究所 2019年2月15日報道発表資料》

自閉症の局所的な神経情報処理特性 | 理化学研究所

 

 

脳のデータ処理時間の違い

脳の中では受け持ちの場所によって、情報(神経的な情報)が入ってきた時にそのデータを一定時間保持したり、処理したり、データをまとめて送ったりしています。

脳全体のデータ処理時間を、理化学研究所を含む国際共同研究チームで調べた結果、脳神経内の「神経時間スケール(作動時間)」が

  1. 視覚や外部刺激の知覚…一般の人(定型発達者)よりも短かく、敏感である
  2. 記憶や抑制コントロールなどの部位…長い人は「こだわり」の程度が強い

という内容が分かりました。

 

神経時間スケールは、ある神経領域が神経情報入力をどの程度の時間保持し、処理・統合できるかを示しています。

自閉症の局所的な神経情報処理特性 | 理化学研究所

 

 

情報への反応時間やデータの保持時間に違いがあり、その違いが特性に関与していることが個別に見えてきたわけなのです。

 

ASD 脳機能

 

1.コミュニケーション・こだわりとの関連性

視覚や外部刺激の知覚を受け持つ部位(一次体性感覚野:頭頂葉)については、定型発達者よりも敏感に反応していることになります。

ASDの中心となる症状(コミュニケーションの困難さ、こだわり)の程度の強さと関連していることが分かりました。感覚過敏(物音への敏感さ、光・色への敏感さ)との関連も想定されています。

 

2.記憶や抑制コントロール

記憶や抑制コントロールを受け持つ部位(尾状核:びじょうかく)については、定型発達者よりも長いほど、こだわり(常同性)が強く出ているようです。

 

異なっているものの、安定的に機能している

人間の発達や生き方は脳内の情報処理がベースとなっています。ASDのような困難さを抱えている人の場合は、一般の人とは異なる脳内の情報処理が行われていると想像できます。

その情報処理は一般の人とは異なるものの、安定して機能しています。安定しているからこそ、特性が生涯にわたり続くということになるのです。

 

年齢的な違いはあるのか

ASD 脳機能

今回の「神経時間スケール」の測定結果は、ASDの症状の重症度とも関連していることが分かりました。

 

これら一次体性感覚野・視覚野・尾状核における神経時間スケールの非定型性は、思春期以前(10~12歳)に既に現れ、さらに思春期発達の間(12~16歳)にも維持される、もしくは拡大する傾向があることが分かりました。

自閉症の局所的な神経情報処理特性 | 理化学研究所

 

  • 思春期よりも前の時期(10~12歳)に、すでに現れている。
  • 小児発達段階でも同じ傾向にある。
  • 症状の重症度にも関連している。
  • 思春期発達の時期(12~16歳)もそのまま維持・拡大する傾向がある。

脳は一定の持続時間や反応速度で機能していて、安定的に活動しています。ASDの場合、脳内の特定の部位で特徴的な情報処理をしていて、症状とも関連しているわけです。

特定の部位との関連性が分かったのは初めてとのこと。この研究により早期診断や症状の研究、早期の治療スタートに向けた手掛かりになることが期待できます。

 

特性を生涯かかえていく

ASD コミュニケーション

 

発達障害については「対症療法」によって支援する方法が取られています。

本人が抱えている「生きにくさ」が緩和される場合もありますが、自分の特性を生涯、持ち続けることになります。

研究の「神経時間スケール」と聞くと難しく感じますが、脳波測定などで計測が可能だといいます。今後、早期診断法の開発も可能となりそうです。

また、他の神経疾患との違いを見つけることで解明される部分が増えてきそうです。ASDの研究だけでなく、脳機能全体の解明につながりそうですね。