呼吸の深さと脳の酸欠
お子さんは胸で浅く呼吸していませんか。育児に悩んでいるパパ・ママも、呼吸が浅くなっていませんか。悩みの深い人、発達に特性を持った人は普段の呼吸が浅い点が多いと指摘されています。
人の呼吸は1分間に15~20回で、1日に換算すると約3万回。
浅い呼吸が普通になっているとその分だけ脳の酸素も不足してきます。
呼吸を深くゆっくり意識することで、脳までしっかり血液と酸素が届くようになります。
しかし子どもに教えても、なかなか取り組んでくれないもの。
深呼吸の方法として「腹式」呼吸が有名ですが、横隔膜を意識する「腹圧呼吸」もあります。
- 呼吸の深さと脳の酸欠
- 脳の酸欠と自律神経
- [1]「腹式(丹田式)」呼吸とは
- [2]腹圧と体幹の関係
- [3]横隔膜を使うと、夜眠くなる
- [4]スタンフォード式の「腹圧呼吸」とは
- [5]大人は「息止め深呼吸」にチャレンジ
- 《まとめ》「腹式」呼吸と「腹圧」呼吸
脳の酸欠と自律神経
脳の酸素消費量は身体全体の20~25%にものぼり、脳の活動には大量の血液が必要です。
普段から呼吸が浅いと脳への酸素量や血流量が不足しがちになるため、イライラしたりソワソワする落ち着きのなさが出てくる原因にもなるのです。
脳細胞を守るためにもできるだけ深い呼吸ができると良いのです。
脳には中枢神経が集中しています。脳に充分な酸素がいきわたると自律神経のバランスも良くなり体内時計も整ってきます。
深い呼吸の「腹式呼吸」ができるといいのですが、難しい場合は外で遊んだり走ったりする生活を心がけるようにしましょう。腹式呼吸と腹圧呼吸についてご紹介します。
[1]「腹式(丹田式)」呼吸とは
有名な腹式呼吸は、おなかの「丹田(たんでん)」という部分をポイントにして呼吸を行います。丹田は、おへそから指3本分下あたりです。
- 鼻からゆっくり20秒かけて吸う
- 息を吐くときは、口から20秒かけて吐く
このリズムで繰り返していきます。
丹田の場所を意識しやすいように、両手をおなかに当てて呼吸すると吸ったり吐いたりを実感できます。
[2]腹圧と体幹の関係
数字を数えながら呼吸方法を説明していても、お子さんには難しいものです。普段の呼吸が浅くて横隔膜を使い切れていないと体幹にも影響が出てきます。
横隔膜と体幹
落ち着きがなかったり、呼吸が浅い場合、体幹の弱さも気になる事があると思います。横隔膜をじゅうぶん使っていないと腹圧が弱まります。
すると身体の中心にある背骨や体幹が支えにくくなり、身体が安定しにくくなるのです。姿勢が歪んでいたり猫背気味になるなど、姿勢を保持しにくくなります。
[3]横隔膜を使うと、夜眠くなる
自律神経には、活動的な「交感神経」と、休息のための「副交感神経」のバランスで成り立っています。夜になると自然に副交感神経が優位になり、眠気を感じるようになるのです。
横隔膜には自律神経が集中していますので、ふだんの呼吸で横隔膜をしっかり使っていると心地よい疲労となります。
夜になってもテレビを見て目がさえている、視覚優位でテレビやゲームを止められない。そういう場合は横隔膜をしっかり使う呼吸をすることで横隔膜が鍛えられると、体幹や自律神経が整ってきます。
[4]スタンフォード式の「腹圧呼吸」とは
スタンフォード式という「腹圧呼吸(IAP呼吸)」があります。
一般の腹式呼吸とは異なり、息を吸うときも吐くときも横隔膜をふくらませる呼吸法です。
「腹圧呼吸」とは?
息をゆっくり吸うと横隔膜が下がります。横隔膜が下がったまま、さらに上から押すようにして息を吐いてみるのです。
息を吐くけれどお腹をふくらませる「あべこべな」呼吸になります。
お腹の中では、内側に向けて圧力がかかるとお腹まわりの筋力も力が入ります。内と外の効果で身体の中心が安定するようになり、横隔膜も鍛えられるようになるのです。
腹圧呼吸の方法
- 鼻から5秒かけてしっかり息を吸い、お腹を膨らませます。
- 息を吐くとき、5~7秒かけてゆっくり吐いていきます。
- 横隔膜を下に押し下げる感覚で息を吐いていきます。へその下のお腹まわり一帯を押し出す感覚です。
わずかな運動でも横隔膜を動かす練習になる
運動が苦手なお子さんも多いと思いますが、無理にスポーツをしなくても普段から身体を動かすことで呼吸の回数を増やし、横隔膜のトレーニングをすることもできます。
呼吸を止めないように片足立ちをするだけでも、座っている姿勢より酸素を必要とするため、呼吸の回数が増えてきます。
ムリをさせると続きませんので、遊び半分の活動を心がけるようにしましょう。
[5]大人は「息止め深呼吸」にチャレンジ
子どもには難しい方法ですが、息を止める時間をキープして深呼吸を促す呼吸法もあります。
呼吸の途中で息を止めると、脳は酸素が減ったと錯覚し、多くの血液を脳に運ぼうとして血液の循環が良くなるのです。
「息止め呼吸」の方法
- 息を鼻からしっかり吸いこみ、いったん止めます。
- そのまま数字を数えてできるだけ長く我慢し、それからゆっくり口から吐いていきます。
- 吐ききって落ち着いたらまた思い切り息を吸いこんでいきます。
息を吐くときは身体の悪いものが出て行くイメージで、ゆっくり吐いていきましょう。吐く最後に「フッ」と吐き切ってから鼻から吸い込みはじめると、脳に酸素が十分に届けられます。
イライラしたり、眠れないときなどにも取り組んでみましょう。
《まとめ》「腹式」呼吸と「腹圧」呼吸
一般的に深呼吸といえば「腹式」呼吸だろうと思いますが、子どもに教えてもなかなか練習してくれません。子ども達の興味を引くために、あべこべな「腹圧呼吸」を教えてあげてみてはいかがでしょうか。
横隔膜は普段意識することもありません。でも腹圧を感じていると、お腹に横隔膜があり、その動きで呼吸できていることが分かります。
呼吸は自分をコントロールするために意識したいポイントです。その意識づけのきっかけとして腹圧式はおススメの方法です。